発表資料

最新の資料は一番下にあります。

生命倫理カフェ・ねりま 立ち上げ記念講演会要旨(2014年11月23日実施済)

講演概要:13トリソミーという先天性染色体異常は、かつては医療の対象になりませんでした。脳の低形成などの重度の奇形を合併するために、ほとんどの子が1歳までに亡くなるからです。しかし最近は、できるだけ治療をおこない、可能ならば在宅介護に移行する動きが強まっています。私は、地元の主治医として13トリソミーのお子さんの家族とかかわることになりました。障害児を授かることの意味を家族と共に考え、また、その他の在宅の重症児の家庭にも訪問を重ねました。短命と思われたその子は少しずつ発達を示すようになり、家族も障害児を授かったことの意味を見出していきました。新型出生前診断によって胎児が選別される風潮が強まっている現代において、障害児を受容するとはどういうことなのか、障害胎児の命を放棄することは私たちを幸福にするのか、拙著「運命の子 トリソミー」の物語と共に講演で述べていきたいと思います。

講師 松永正訓(まつながただし)医師:プロフィール

   1961年、東京生まれ。1987年、千葉大学医学部卒業、小児外科医となる。小児がんの遺伝子研究により医学博士号
   修得 。日本小児外科学会・会長特別表彰など受賞歴多数。2006年より、「松永クリニック小児科・小児外科」院長

 として第一線で活躍するかたわら、『小児がん外科医 君たちが教えてくれたこと』(中公文庫)や『命のダイアリー
  小児がんを乗り越えた少年・少女たち』、『がんを生きる子 ある家族と小児がんの終わりなき闘い』などを執筆、著
  作業にもいそしむ。2013年には
 『運命の子 トリソミー:短命という定めの男の子を授かった家族の物語』で第20回

  小学館ノンフィクション大賞を受賞。

 講演後、参加者の方々が車座になって松永先生と活発な意見交換を行いました。



新型出生前診断(NIPT)その1、                                                                             2015年3月開催時の配布・プレゼン資料         (山森 俊治)

新型出生前診断(NIPT)その1                                                                           

2015年3月開催時の配布・プレゼン資料 (山森 俊治)

工事中

新型出生前診断(NIPT)その2

2015年4月開催時の配布・プレゼン資料(要約) (山森 俊治)

 

20154月生命倫理カフェ例会 話題提供資料

  題名:新型出生前診断その2 (NIPT関連アンケートの紹介)

                                         2015430

                                     話題提供者 山森 俊治

 

 20153月生命倫理カフェ例会において、新型出生前診断(NIPT)について話題提供し、議論を行った。その中で、妊婦さんによるNIPTに対するアンケートを紹介したが、母数が少なく、再度、NIPTに対する妊婦さん等の意見や一般の方々に対するアンケートを調査して紹介して欲しいとの意見があった。

 今回、NIPTに関して、妊婦を対象とした母数の多いアンケート結果がないか調査を行ったが、インターネットでの検索において、統計学的に有意と思われる資料は見いだせなかった。しかし、以下のようなンケート結果が掲載されたホームページがあり、内容を要約し、20154月生命倫理カフェ例会にて紹介した。

 

(1)   NIPTに限ったアンケートではないが、妊婦を対象としたNIPTを含む出生前診断全体についてのアンケート調査結果

(2)   一般人を対象としたNIPTに関する比較的規模の大きい世論調査結果

(3)   NIPTに関する講演会後に実施されたアンケート調査結果

(4)   宗教界の方々へのNIPTについてのアンケート調査結果

 

(1)  について

医療・健康系モバイルサービスを展開する株式会社プラスアール(本社:東京都港区、代表取締役:佐藤竜也)が、新型出生前診断スタートから1年が経過するにあたり、1200名近くの妊婦さん(カラダノート会員/「妊娠なう」の利用者)から寄せられた、「出生前診断についての調査」について、受診の有無や検査項目などについてレポートしている。引用(*1)  http://www.plusr.co.jp/2014/04/investigation/3707.html

以下、質問と結果を示した。

「出生前診断を受ける予定、もしくは受けましたか?」という設問に対し、1181名の回答があり、受ける予定はないとの回答が83.0%であった。

検査を受けた妊婦さんの年代別の内訳は108.5%、20代 45.8%、3042.3%であり、20代の妊婦さんが30代の妊婦さんを上回る結果となっている。 年齢に関わらず、おなかの赤ちゃんについての不安が絶えない妊婦さんの気持ちがうかがえる結果であるとコメントされている。

出生前診断の中で最も受けられていたのは「羊水検査」で 91 /241 (37.8%)であった。

出生前診断についての具体的なコメントも掲載されているが、詳細は上記引用  (*1)URLを参照願いたい。

 

(2)(3)について

科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)のホームページにダウン症など3つの染色体異常を調べる新しい出生前診断や不妊治療について考える第73回サイエンス・カフェ札幌の開催内容が掲載されている。

http://costep.hucc.hokudai.ac.jp/costep/contents/article/757/

このうち、北海道新聞が平成251013日に掲載した調査対象3000人の新型出生前診断の世論調査が円グラフで示されている。

胎児の染色体異常の検査をあなたは受け入れられますか?との設問に対し、もっともあてはまる選択肢を選ぶアンケートであるが、「受け入れられる」44.22%、「どちらかといえば受け入れられる」35.1%、「どちらかと言えば受け入れられない」が11.7%、「受け入れられない」4.2%、「分らない・無回答」が4.8%となっている。また、簡単ではあるが、容認、拒否それぞれの理由も示されている。

 これらの結果とNIPTに関する第73回サイエンス・カフェ札幌が開催されたのち参加者に対して実施されたアンケート結果が比較され、同様に円グラフにて示されている。

 「受け入れられる」が27%、「どちらかといえば受け入れられる」32%、「どちらかと言えば受け入れられない」が14%、「受け入れられない」1%、「分らない」が26%となっている。講演を聞いたのちのアンケート結果において受けられるが27%となっているのは一般人を対象とした世論調査のその数字と比較し、有意に低いことおよび分らないが有意に高いのは、知識の保有により考えが大きく変わることを示しており、特徴的な変化である。

 この他、会場からのコメントが多数記載されており、本生命倫理カフェ例会において、いくつかのカテゴリーに分類し紹介した。この際、「生命に介入する科学II〜受精の前から始まる次世代コントロール 〜」第77回サイエンス・カフェ札幌のアンケート結果も合わせて、紹介した。(グラフ等について以下のURLを参照願いたい。)

http://costep.hucc.hokudai.ac.jp/costep/contents/article/1249/

この第77回カフェアンケート結果には胚の遺伝学的検査についてのアンケート結果も含まれるが、着床前診断についての結果や意見・コメントについては、別途、時間を設け、生命倫理カフェにおいて紹介し、議論することとした。

 

(4)  について

     宗教文化専門紙として百十数年の紙齢を重ねる中外日報社のホームページの2013530日付の記事に ~中外日報コメンテーターに聞く~ と題して宗教界の各分野で活躍する有識者48人に委嘱する「中外日報コメンテーター」に対し実施した「出生前診断について」のアンケート結果が掲載されている。

http://www.chugainippoh.co.jp/rensai/jiryu/130530-001.html

コメンテーターへの質問は、診断への賛否診断の規制相談者への助言宗教界の対応――4問。以下、ホームページからの引用を示した。

  は「新型や従来の羊水検査等による出生前診断で、染色体異常による胎児の障害

の有無を検査することについてどのように考えるか」。

四つの選択肢のうち、A「検査は一切すべきではない」は4人。B「中絶につながるのであれば検査はしない方がよい」が19人、C「遺伝カウンセリングなど環境が整えられれば検査は認めても良く、その上で場合によっては中絶も認められる」が15人と回答がこの二つに大きく分かれた。

  は「新型出生前診断について日本産科婦人科学会は、遺伝カウンセリング体制を

充実させることなど検査の実施指針を発表したが、従来の羊水検査等も含め出生前診断について法律の規制はない。規制についてどのように考えるか」。

「医療関係者が学会などで規制すべきだ」が20人で最多だった。国の規制は「国民的議論が熟」さず「性急」で、「生命の領域を支配しようとする」とし、「専門家集団」である医療関係者の規制が妥当とする意見が多かった。

  は「妻が妊娠中の夫婦が相談に訪れた。『高齢出産のため子が病気を持って生まれる可能性が高くなると聞いた。新型出生前診断を受けたいが結果への不安もある。どうすればいいか』。宗教者として、また宗教的立場からどのようにアドバイスするか」との問いに自由に回答を求めた。

相談者に「寄り添い」ながら「授かりもの」である子供の「いのちの尊さ」を説き、最後は「親の覚悟」の下に相談者が判断すべきだ――などとする回答が寄せられた。

  は「新型や従来の羊水検査等を含め出生前診断について、宗教者や宗教教団などが、どのような対応をすべきか」。

宗教者が「議論」「研修」を重ねて社会に「発言」すべきだとする回答、診断への賛否以前に当事者に「寄り添う」姿勢が必要とする意見があった。

ホームページにはこれらの質問に関わる宗教者のコメントも紹介されており、今回の生命倫理カフェ例会では、抜粋して紹介を行った。

宗教者のなかでも、出生前検査に対して、様々な意見が示されているが、宗教者らしい発言が認められた。

 以上、いくつかのアンケート結果の紹介を行ったが、着床前診断についてもある程度、同様な問題が推測される。着床前診断における倫理的問題については、上記のごとく、別途、時間を設け紹介する予定である。

 

                                                                                                                                   以上

2015年7月生命倫理カフェ例会メモ

2015年7月例会 <講師プロフィール>

村井美月さん

栄養学講師・栄養睡眠改善トレーナー、株式会社ワークスプランニング代表取締役

http://www.works-p.com/

女子栄養大学卒。同大学院にて修士(栄養学)取得。医化学研究室にて、睡眠とうつ、

食生活、遺伝子多型との関連を研究。睡眠改善インストラクター。その他多くの

関連団体の役員、コーチを兼務。多方面での講演や執筆活動を展開。

最近では一般社団法人日本栄養睡眠改善協会を立ち上げるなど

精力的に活躍中。

 

 

2017年1月28日例会(開催済) 「暮らす」を考える~民家の学校から学んだこと 

(事前話題提供資料:森本)

 

以下の各資料をクリックすると拡大します。

                                                                                                                                                         山森 俊治記

 

 2015年7月28日、「時間栄養学の観点から自分の生命と人生を考える」という話題で、7月度の生命倫理カフェが開催されました。

話題提供者は一般社団法人日本栄養睡眠改善協会理事長の村井美月氏で、㈱ワークスプランニングの代表取締役もされております。女子栄養大学大学院医化学研究室にて、睡眠とうつ、食生活と遺伝子多型との関連を研究され、修士号(栄養学)を取得されました。睡眠改善インストラクターであり、その他多くの関連団体の役員、コーチを兼務、多方面での講演や執筆活動を展開されている。最近では一般社団法人日本栄養睡眠改善協会を立ち上げるなど精力的に活躍中です。以下、ご講演の要旨を示します。

 時間栄養学という聞きなれない言葉がタイトルに使われていますが、私たちのからだには、約24.5時間の周期のリズムを刻む概日リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれる体内時計の機能が備わっているとされている。この体内時計の働きによって、睡眠―覚醒リズム、体温リズム、食事リズムなど生活リズムが作られており、それは食生活にも影響することが明らかになってきており、いつ起きて、いつ食べて、いつ運動するか? 常に時間を考えて行動することで、心身ともにベストな状態に向かうというのが時間栄養学の考え方です。

 講演では、まず、「人はリズムで生きている」ことについて具体例を示し、説明がなされました。     

 マスタークロック(体内時計の親玉)は脳視床下部の視交叉上核に存在、胃や腸、肝臓にも時計遺伝子が存在し、マスタークロックと内臓などの体の時計が同調せずにいると、自律神経の乱れにつながる。体内時計を正しく動かすポイントは、光と食事と運動である。脳の体内時計は光でリセットされ、内臓などの体内時計は朝食でリセットされる。よって、良い睡眠習慣のためには体内時計や生活習慣を整えることが大切であることを強調した。

1)光との関係

メラトニンは脳の松果体と呼ばれる部分から分泌されるホルモンで、体内時計に働きかけることで、覚醒と睡眠を切り替え、自然な眠りを誘う作用があり、「睡眠ホルモン」とも呼ばれている。 概日リズムの周期は一般的に約24時間半で、30分の周期のズレがある。しかし、朝の強い光を浴びると、脳にある体内時計の針が進み、体内時計がリセットされて活動状態に導かれる。また、この信号で、メラトニンの分泌が止まる。メラトニンは目覚めてから14〜16時間ぐらい経過すると体内時計からの指令が出て再び分泌される。 徐々にメラトニンの分泌が高まり、その作用で深部体温が低下して、休息に適した状態に導かれ眠気を感じるようになる。

 しかし、夜中に強い照明の下にいると、体内時計の働きが乱れ、メラトニンの分泌が抑えられ、これが、睡眠・覚醒リズムが乱れる原因となる。

現代社会においては、夜更かしや暴飲暴食、運動不足、シフトワークなどで生活習慣を乱しやすく、体内時計を乱しやすい環境にあるといえる。体内時計の乱れが続くと、睡眠覚醒リズムが乱れて不眠が引き起こされる。体内時計の乱れが続くと、生活習慣病などのその他の疾患にも悪影響を与える。

●眠りの仕組みとホルモンについて

 成長ホルモンは脳下垂体から分泌されるが、成長ホルモンを分泌させるためには寝入りばなの深いノンレム睡眠時が必要であると考えられており、発育期の子どもでは身体の成長に、成人では組織の損傷を修復・再生することで疲労回復に役立っているなど、代謝のコントロールに関わっている。「寝る子は育つ」ということわざは、こうした事実に裏づけされる。(http://www.human-sb.com/mechanism/sleep-growth-hormone.html)

 睡眠不足は脳の情報処理スピードの低下、集中力の低下、意欲の低下など、脳にありとあらゆる良くない事を引き起こし、睡眠不足の長期化は様々な疾病のリスクを高める。

 すなわちうつ病の発症が高まるとともに、肥満・高血圧・糖尿病のリスクやアルツハイマー型認知症のリスクが上がることが知られている。また、睡眠時間が短いほど死亡率が上がるとの調査もある。逆に、9時間以上の睡眠も死亡率をあげる。

 睡眠の改善について考えるときに欠かせないのが「メラトニン」「セロトニン」「トリプトファン」の3つの関係をよく知ることである。この3つはお互いに密接な関係を持ちながら、私たちの睡眠に大きな役割を果たす。

メラトニンの分泌を増やすにはどうすればよいか。そのカギは「セロトニン」にある。セロトニンが分泌されるのは日中で、とくに太陽の光を浴びることにより、セロトニンの分泌は促進される。

 セロトニンの材料になるのは、必須アミノ酸「トリプトファン」である。トリプトファンは主に食品のタンパク質(肉、魚、豆乳、乳製品)に含まれていて、体内に入って脳に運ばれたあと、セロトニンに変化する。そして、夜になるとセロトニンは「睡眠ホルモン」であるメラトニンに変わり、眠りをサポートする。必須アミノ酸は人間の体内では合成できないため、日々の食事からトリプトファンを摂る必要がある。

2) 食事との関係

① 毎朝、同じ時間に起床すること。 ②起きたらすぐに、太陽の光を浴びること。③朝ごはんを食べることが睡眠リズム改善のために重要である。

特に、栄養のバランスが取れた朝ご飯を食べることは、体の体内時計をリセットし、脳や体の活性化を行うことに繋がる。 ビタミンB群不足は体がだるい、やる気がないなどの症状をもたらす。のビタミンCは過度のストレスで消費されるため、ストレスに対抗するためにはビタミンC が必要。鉄分、ビタミンB12および葉酸の不足は貧血を起こしやすくなる。

就寝前の寝酒は要注意であり、カフェイン摂取は、夜の不眠予防のためには夕方までにとどめておくのが良い。睡眠」不足になる原因は夜の過ごし方にあり、夜は寝るという目的に向かって、刺激を減らすことが大切。睡眠日誌をつけることも睡眠リズムの改善に有用である。

 

                                                                                    以上

例会話題提供資料

着床前診断(PGD)等の倫理的問題

(着床前診断および関連する生殖医療の倫理的問題)

                         

                            話題提供者 山森 俊治

 

着床前診断(PGDは受精卵が子宮に着床する前にその受精卵が遺伝子や染色体に異常がないか検査をすることを言います。最近(20172)、日本産科婦人科学会が「着床前スクリーニング(PGS)」の臨床研究を開始するとの発表した(1)のを機会に、PGDPGSおよび卵子提供、ゲノム編集など関連する生殖医療の倫理的問題点について話題提供した。

まず、PGDPGSの意味および用いられる検査技術について簡単な説明(2)(3)を行った。更に、より理解を深めるため「着床前診断の新たな潮流」と題したYou Tubeの動画(4)を紹介した。

次に、日本国内に於けるPGDの歴史的な沿革(5)の紹介とともに,本年(2017年)2月に発表されたPGSの臨床研究開始の内容について説明した。

また、1998年以降のPGDについての賛成意見、反対意見(障害者団体の声明も含む)(6)および識者のコメント(7)8)とともに諸外国の着床前診断の規制(9)についても触れた。

様々な意見がでているが、議論のポイントについてNHK時事公論の記事(10)を紹介した。この他、日本産科婦人科学会に所属しない不妊治療を専門とする産婦人科医院のPGS実施状況(11)についても触れた。20112月から20147月にかけて559人にスクリーニングを実施したとのこと。41才女性のスクリーニングを行わなかった体外受精における着床率は20.9%なのに対し、スクリーニングを行った女性の着床率は46.6%と約2.2倍に。流産率は、スクリーニングを行わない場合は40.8%だが、スクリーニングを行うと11.1%と約4分の1になり、劇的に効果がみられたという。

その他、PGSを実施する医師の以下の意見を紹介した。障害があるとわかっていても赤ちゃんを産み、育てる行為は尊いものです。しかし同時に、すでに日本では羊水検査によって“障害を認知した”あとの中絶が実質的に認められている現実を忘れてはならない。また、PGSは、子宮に戻す前の受精卵に異常を見つけることのできる世界で認められた検査方法です。(11

識者のコメントのごとく、一学会が決める問題ではなく、社会的な議論を更に進め、国のガイドラインなどで歯止めや規制が必要であろう。

この他、受精卵取扱にかかわる医療事故(12)や、先に生まれた子に白血病などの病気があった場合、その子を救うために、骨髄移植のドナーとして適合する子どもを産もうと、受精卵を検査して、HLA型の一致する卵子だけを使って、体外受精を行うといったフランスでの医療技術の登場(救世主兄弟)について紹介した。(13

また、新たな動きとして、米国の代表的学術機関である米科学アカデミー(NAS)と米医学アカデミー(NAM)が、生物のゲノム(全遺伝情報)を自由に改変できる「ゲノム編集」技術を、厳しい監視の下、将来的には遺伝性疾患を予防する目的に限りヒトの受精卵に応用することを容認する報告書をまとめた。という記事(14)について触れた。公表された報告書では、ゲノム編集の生殖細胞への応用は倫理的な懸念はあるものの、技術の進歩は早く、遺伝性の病気の治療につながる可能性があるとしています。そのうえで、将来的には、ほかに治療の選択肢がなく、その病気に関わる遺伝子だけを操作すること、そして数世代にわたる追跡調査や透明性の確保など、厳しい条件の下で実施を容認しうるとしています。(記事14からの引用)

更にこれらに関連して、ゲノム編集で不妊治療 期待の裏には倫理問題 という記事(15)を紹介した。精子等の遺伝子操作は倫理的に一線を越える」という一般社会の懸念を、一部の科学者は「技術はそこまで発展していない」と説明して鎮めようとしている。だが別の科学者は、まもなく一線が踏み越えられるとみている。との意見が述べられている。

以上、着床前診断を中心に生殖医療に関わる倫理的問題について紹介をする形で話題提供を行ったが、日本ではゲノム編集などの新たな技術が社会に広がるなかで、これらの技術の取扱に関する法規制が未整備であること、受精段階は刑法の保護対象外であること、また、これらの問題について市民も関わり議論する場も不十分と考えられることから、早急な対応が必要と思われる。

 

話題提供で引用した資料

1日本経済新聞  2017214Web

   着床前検査の研究着手 学会、流産予防を検証

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO12869460U7A210C1000000/

2)着床前診断(着床前診断の検査法)医療法人オーク会 Web site

   http://www.oakclinic-group.com/pgd/kensa.html

3)初めての遺伝子検査、 着床前診断とは

https://first-genetic-testing.com/genetic-testing/pgd.html

4)慶応義塾大学医学部・大学院医学研究科X朝日新聞社 先端医療情報イノベーション寄付講座、連続インタビュー ゲノム医療のいま、明日

   第3回目 出生前診断:着床前診断の新たな潮流

   https://www.youtube.com/watch?v=utME8goLr6k

5)立教大学 滝川ゼミナール 2015429日 PDF資料 着床前診断

http://www2.rikkyo.ac.jp/web/taki/contents/2015/20150429.pdf

6)日本産科婦人科学会による「習慣流産に対する着床前診断についての考え方」(平成18年2月18日)を公表後の 78件の意見および当会宛の抗議文

http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_23feb2006.htm

(7) 日本経済新聞 2017215Web記事

着床前検査、学会が6施設で開始 「有用性と倫理面、検証」

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO12920650U7A210C1CR8000/

 

8)毎日新聞  2017214日 Web記事

日産婦、着床前検査、今春研究開始…中心の慶大不参加

http://mainichi.jp/articles/20170214/k00/00m/040/105000c

 

9)諸外国における出生前診断・着床前診断に対する法的規制について

   国立国会図書館 ISSUE BRIEF Number 779 (2013.4.2

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8173847_po_0779.pdf?contentNo=1&alternativeNo=

10NHK ONLINE 解説委員室 時論公論 「受精卵の"選別"は認められるか ~着床前スクリーニング~」(201533日)中村幸司  解説委員
 
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/210561.html

11)ニュースポストセブン2015826Web記事(女性セブン201593日号記事)

着床前スクリーニング 禁止されても実施する医師が理由解説

http://www.news-postseven.com/archives/20150826_344493.html

12)毎日新聞201714日 Web記事

奈良の病院、夫に無断で受精卵移植 別居の妻出産

http://mainichi.jp/articles/20170104/k00/00m/040/140000c

13NHK 福祉ポータル ハートネット 生命操作ー復刻版―

9「受精卵で遺伝子診断」

http://www.nhk.or.jp/heart-net/life/case_study/c09.html

14Science Portal  2017216日 ニュース - 速報・レビュー(レビュー)Web

   ゲノム編集のヒト受精卵応用を米学術2機関が条件付容認 道筋示し各国内議論に影

   響

https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/review/2017/02/20170216_01.html

15)日本経済新聞2016/10/29 電子版 

ゲノム編集で不妊治療 期待の裏には倫理問題

 

http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXMZO08713130U6A021C1000000&uah=DF190920135915